RSJ Open Forum

『 研究成果を論文にまとめる意義とその技術 』

ロボット学会では,これまでにも学術講演会のオープンフォーラムや特別企画などで,論文の書き方や国際会議に出席する意義などの議論が進められてきた.しかし近年,論文の在り方・国際会議とJournal Paperの関係などが大きく変わりつつある.顕著な例が,Robotics and Automation Letters (RAL)の創設である.ICRAやIROSにRAL Optionがつくことで,実質的にJournalとConferenceの同時投稿が可能になった.そのような変化の中で,英語の論文はどのように執筆していったらいいのか.また,博士号取得に要求される論文がImpact Factorの付く雑誌に限定されるなどの変化もあり,日本語で論文を書く機会が極端に少なくなっているが,日本語で論文を書く意義はどこにあるのか.アカデミック分野に残らないなら,研究を論文にまとめることに意味がないのか.また,コロナ禍で国際会議に「行く」ことができない中で,改めて考える国際会議に出席する意義・楽しさ,またコロナ後は国際会議とはどのように付き合っていくべきか,など2名の講師の講演と質疑応答形式のパネルディスカッションにより,研究を論文にまとめる意義とその技術,国際会議出席の価値について話し合う.

 

プログラム

12:15-12:20 Opening Remarks 

12:20-12:35 講演1:木野 仁 先生

12:35-12:50 講演2:山本 江 先生

12:50-13:15 パネルディスカッション(質疑応答)

 

質問

パネルディスカッションでの議論で是非聞いてみたいことがあれば、事前に下記のフォームから送って下さい。

https://forms.gle/ukAcxmXDaxGfa85p6

 

講師

■木野 仁(Hitoshi Kino) --- 博士(工学)

技術士(機械部門)及びAPECエンジニア(Mechanical Eng.).
立命館大学大学院博士後期課程中退.
福岡工業大学を経て,2020年4月より中京大学工学部機械システム工学科准教授.
ワイヤ駆動ロボット,筋骨格構造ロボット,受動歩行,ソフトアクチュエータ等の研究に従事.
日本ロボット学会,日本機械学会,人工知能学会,IEEEの会員.
主な著者に『イラストで学ぶロボット工学(講談社)』,『ロボットとシンギュラリティ(彩図社)』,『工学博士が教える高校数学の「使い方」教室(ダイヤモンド社)』などがある.

アブスト:査読付き論文を書く行為は,自分の成果を正しく外部へ伝える事である. 査読プロセスを通じて,限られたスペースの中で必要かつ十分な内容をまとめることで,研究を紡ぐ次世代への知識継承が可能となる.また,文章を書くスキルというものは訓練により上達する. 内容を整理し,査読者という強敵を論破できる文章能力を磨くことは,一般のビジネスパーソンにとっても強力な武器となる. 口頭発表に代表されるプレゼンテーション能力と文章能力は言うなれば人間にとって右手と左手である. どちらか片方では優良なパフォーマンスを得ることは難しい. 本発表ではこれらの視点にもとづき,査読付き論文を書くことの意義を主張したい.

 

■山本 江 (Ko Yamamoto) --- 博士(情報理工学)

2004年東京大学工学部機械情報工学科卒業.2009年6月同大学大学院情報理工学系研究科知能機械 情報学専攻博士課程修了.2009年から東京工業大学産学官連携研究員,2012年から名古屋大学助教を経て,2014 年から東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻助教,2016年から同大学大学院特任講師.2017年11月から大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 准教授となり現在に至る.2012年10月~12月までスタンフォード大学客員研究員.ヒューマノイドロボットの機構と力学・制御,人間のバイオメカニクス解析,歩行者群の数理,油圧ロボティクス,ソフトロボティクスの研究に従事.日本ロボット学会第33回学会誌論文賞,Mike Stilman Paper Award in 2018 IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots等を受賞.

アブスト:ICRAやIROSをはじめとしたトップカンファレンスでは,気鋭の研究者たちが最新の研究成果を発表する.そのような国際会議の最大の楽しみは,自分が時間をかけて温めてきたアイディアや地道に取り組んできた研究成果を発表することである.発表前の緊張感や,発表に対する他の研究者からの鋭い指摘・質疑に対する応答と議論.自分の発表終了後に他の研究者から個別に声をかけられて話ができると,非常に嬉しい.他の研究者の発表を聞いて,こんなアイディアがあったのかと知的好奇心を刺激されることも魅力の1つである. もちろん,他にも国際会議の楽しみ方は多様であろう.コロナ禍にあって,国際会議の意義・楽しさも変化している.本発表では,個人的な経験を交えながら,国際会議の「楽しさ」について語り合えたらと思う.